【新聞・雑誌記事】 公開日2015.03.20 更新日2015.03.20  HOMEへ メニューを隠す    次へ  掲載記事一覧へ


サンデー山口2014年10月16日号

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近年、社会の高齢化に伴い、種々の心臓弁膜症が増加しています。その中でも大動脈弁狭窄症(だいどうみゃくべんきょうさくしょう)は、失神や心不全が一度でも出現すると、手術が必要です。大動脈弁狭窄症は薬物療法のみでは不十分です。手術が必要かどうか正確な診断が大切です。一般に弁膜症の診断法で聴診は有名ですが、大動脈弁狭窄症の心雑音の大きさと重症度は必ずしも一致しません。三尖弁閉鎖不全症は重症でも、心雑音はほとんどありません。また、軽症または中等症の弁膜症でも、加齢とともに重症化します。薬物療法の内容によってはその進行が遅くなったり、早まる可能性があります。
  例えば、当院では逆流性弁膜症を合併した高血圧症の患者には、利尿剤系(抗アルドステロン剤、類サイアザイド)を優先的に使い、逆にカルシウム拮抗剤はできるだけ避けるようにしています。前者は全身の水分貯留を減らし、逆流性弁膜症の悪化を予防する効果があり、逆に後者は心不全の増悪、逆流の増悪を招くと考えられるからです。
  こういった内容は、「高血圧治療ガイドライン」には、明確な記載はありません。これは同ガイドラインは循環器専門医でない医師でも、一定レベルの高血圧の治療ができるように作成されているからです。つまり、ガイドラインは、最良の治療を勧めているわけではないのです。


サンデー山口2014年7月18日号

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総コレステロール値、LDLコレステロール値の基準値には、専門の学会(動脈硬化学会)が推奨値が一般に使われています。しかし、この基準値はあまりにも製薬会社の都合にすり寄っているとの意見が前々からありました。今回、健康診断のために人間ドックを受けた、その時点で異常なく健康と考えられる男女各5,000人の平均値と標準偏差値から、人間ドック学会が独自に基準値を作成しました。すると、特に病気のない人の総コレステロール、LDLコレステロールの基準値が大幅に上昇したということです。
 動脈硬化学会は、この結果は当然予想していたもようです。動脈硬化学会の現行の基準は「スクリーニングのための基準値」と通常使わない「スクリーニングのためのもの」であることを目立たないように説明に盛り込んでいます。
  わかりやすく言うと「基準値を超した人の中の一部の人にのみ、治療が必要かもしれません。」ということです。そして、その「一部の」というのが全く不明瞭な記載になっています。学会の主張するコレステロールの基準値は、医学的な根拠が極めて薄く、薬が売れるように恣意的に低い基準値になされたものであるとことは自明です。米国よりも心筋梗塞が1/4と少ない日本の基準が、総コレステロール値で20mg/dlも低くなる理由がありません。 その裏には学会(重要役員が長年後退していない)と学会の後援者である製薬会社の強い癒着があると考えられます。
 一方、 人間ドック学会は、製薬会社からの利益を受けていないので、このように結論を出したものと思われます。
ただし、人間ドック学会の出した新基準値がすべて理にかなっているとは思いません。とくに、血圧値に関しては、仮面高血圧を含む状況での基準値であり、問題大ありです。この問題をなくすには、家庭血圧測定を導入しなければならないのですが、手間と経費の点で、人間ドック学会は、家庭血圧測定の導入を検討していません。


サンデー山口2014年4月16日号

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個人的のことで恐縮ですが、他院から当院を受診した患者さんの服薬内容は、原則すべてチェックしています。投薬内容を検討すると、その1/3-1/2は当院なら処方しない薬剤です。中止する理由は、「診断が間違っているもの」「診断は間違っていないが、治療効果が低いか、ないもの」「あきらかに医療施設の利益追求のために出しているもの」などに分類されます。 
 当たり前ですが、当院では効果が期待できない薬剤、副作用のため利益よりも有害性が高いと考えられる医薬品は避けています。例、必要性の低い湿布や鎮痛剤、白内障進行予防のための点眼薬、効果が確認できない胃薬、狭心症治療薬としてのニトロ製剤の長期投薬、認知症(症状)進行予防効果をうたってはいるが、効果がなかった場合、風邪予防のための消毒薬、ウイル性発熱への解熱剤、聞いているかどうか不明の降圧剤などきりがありません 。
  最近目立つものとしては、隠れ脳梗塞があるから、または血管の狭いところがあるからともっともらしい理由をつけて、脳外科開業医が処方した脳梗塞の症状のない人に出した血の巡りを改善する薬などは、医師の損得しか理由しか理由が見当たらず、悪意に満ちているのですべて中止します。
 内科領域では総額から、高脂血症の治療薬が無駄な医療の筆頭になると思われます。多くの医師は、コレステロールを下げる薬を漫然と処方しており、悪意はあまりなく、むしろ患者のためと思っているようのだが、、、、


サンデー山口2014年1月17日号

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心筋梗塞発症リスクは、性差や年齢差の影響が非常に大きいことは、あまり知られていない事実です。50歳男性喫煙者の心筋梗塞リスクは、非喫煙者の4倍以上で、さらに意外なことに70歳の喫煙男性よりも心リスクは高い。たばこを吸う40-50歳の女性は、突然死(主に心臓病と思われる)が、同性同年代の10倍以上に増えます。 50歳の男女の心筋梗塞リスクは6倍くらいの大差で、圧倒的に男性がハイリスクです。つまり、少々コレステロールが高くても女性は全く低リスクです。
 心筋梗塞のリスク因子として、高コレステロール血症が有名だが、LDLコレステロール値が200mg/dl程度の上昇なら、50歳代の女性ではほとんど影響を受けないことは国内外ではっきりしています。女性で高コレステロール血症の治療がこれほど多いのは、先進国では日本だけです。一説には、心筋梗塞発症数に比べて、8倍以上の頻度でコレステロール低下療法が日本では行われているとの推測もあります。 高脂血症治療薬の処方数は、日本だけ異常に突出しています。海外の事情を知らない医師と患者は、だまされてやすい。ガラパゴス医療!