【新聞・雑誌記事】 公開日2012.12.14 更新日2012.12.20  HOMEへ メニューを隠す    次へ  掲載記事一覧へ

サンデー山口2012年12月26日号 
ノロウイルスによる急性胃腸炎(下痢、嘔吐)はきわめて頻繁に見られる冬の感染症ですが、インフルエンザよりも軽症が多いためか、あまり注目されていません。経口感染(糞口感染)のため、空気感染のインフルエンザよりも予防対策は効果が期待できます。新型インフルエンザが出現した2009年にはインフルエンザ予防のための「手洗い」が徹底されたために?、ウイルス性胃腸炎が激減しました。受験生はインフルエンザを気にしますが、インフルエンザによる発熱や倦怠感は我慢できることが多いのですが、下痢や嘔吐を我慢して受験することは非常に困難です。受験生のお母さんにお願いです。受験の数日前から夜食に果物を出さないで下さい。ノロウイルスの多くは、手から食物に移ります。手で触るのに、加熱できない果物は要注意です。

サンデー山口2012年9月26日号


動脈硬化学会のガイドラインは、薬物療法を勧めるのに都合のよい資料は大きく示すのに、都合の悪い資料は見せないか、軽く扱っています。例えば、「総コレステロール280mg/dl以下では女性はコレステロール値の影響をほとんど受けない」ことは、今回やっと示されています。世界中の資料はもちろん以前からあり、日本人で調査された NIPPONDATA80の結果も、2006年に学会誌発表されているにもかかわらず、女性ではコレステロールの影響がきわめて少ないことをはっきり紹介したのは6年後の2012年です。しかも、脳卒中はコレステロールが高いと少なくなることには、未だに一言も触れていません。
 また、どの位の心筋梗塞発症リスクから薬物療法を開始するかについて、科学的な根拠を示さず、海外と比べて非常に低いリスク群を「高リスク群(カテゴリーIII)」としています。ここでもほんとうは高リスクではないので、カテゴリーIIIという曖昧で高リスク群と勘違いされやすい表現を使っています。海外の文献からすると、カテゴリー1はきわめて低リスク群、カテゴリーIIもきわめて低リスク群、カテゴリーIIIの多くは低リスク群で、この分類は臨床的に役立ちません。


サンデー山口2012年6月30日号

以前、他院で処方された鎮痛剤で出血性胃潰瘍となり、緊急入院する患者さんが2年に1人くらいいました。最近は、当院では鎮痛剤を漫然と服用し続ける患者が減り、出血性胃潰瘍で緊急入院する患者は少なくなりました。しかし、「湿布の成分が鎮痛剤である」、「経皮吸収されて内服と同じ副作用がおこる」ことを患者さんは知りません。湿布は内服薬よりは吸収率が低いので、副作用の頻度はやや少なくなると考えられるものの、それでもたくさん長期に使うと副作用が懸念されます。実際、湿布2枚/日以上ではしばしば腎機能悪化が確認されています。全く腎機能が正常だった人が、湿布を4枚/日貼ってクレアチニンが上昇した症例もありました。クレアチニンが1.2mg/dlの人が湿布を2枚/日1ヶ月貼って、クレアチニンが1.8mg/dlになった人もいます。中止で回復しましたが、もし長期使用の場合は回復しない可能性があります。

サンデー山口2012年3月30日号 

米国ならびに日本でも高コレステロール血症の治療ガイドラインは、製薬会社とその取り巻き学者と患者さんとの「利益相反」がしばしば問題になります。専門の学者や製薬会社は薬がたくさん売れれば儲かるようになっています。そのために、必要性の低い人にまで服薬を勧めるように?専門学会が活動しています。とくに日本では海外情報の隔絶があり、情報操作が簡単で、ひどい状況になっています。製薬会社の息のかかった学者で作っている動脈硬化学会の高脂血症治療ガイドラインは、薬物療法の目安を曖昧な表現にしながら、たくみに薬物療法に誘導する内容となっています。海外では心筋梗塞発症の絶対リスク評価が不可欠とされていますが、日本人のデータでは心臓死しか扱っていない日本データ80を代用して、海外との比較が困難になっています。やや小規模で調査期間も短いなどの欠点があるのですが、JALSやMEGA study chartなどで絶対リスク評価ができるのに、これらは参考資料として推薦していません。動脈硬化学会のガイドラインは患者さんにとってむしろ有害です。


サンデー山口2011年12月28日号

タンパク質が不足している(血中アルブミンが低下している)高齢者は結構います。タンパク質が不足すると、生命維持の基本能力が低下します。また、同じカロリーの炭水化物や脂肪を摂取した場合、タンパク質の方が消化吸収、代謝のためにより多くの熱量を発生します。また、タンパク質(消化分解されてアミノ酸になります)は身体を形成する基本物質です。太っている高齢者でもタンパク質不足(血中アルブミン低下)がしばしばあります。血液検査ではアルブミン値にも気をつけてください。