【新聞・雑誌記事】 公開日2011.10.10 更新日2012.12.20  HOMEへ メニューを隠す    次へ    掲載記事一覧へ

サンデー山口2011年12月28日号  

サンデー山口

サンデー山口2011年9月24日号


最近、「無症状だが、脳MRIで脳梗塞がある」「頚動脈エコー検査で動脈硬化がある」と説明されて、意味のない脳血管血流改善剤?とかいう薬剤を処方される患者さんをしばしば見かけます。脳MRIで見られるシミの様な小斑点は高齢者の全員にあり、脳梗塞も脳出血もそれ以外の老人性のシミみたいなものも区別がつきません。百歩譲って、これらが小さな脳梗塞だったとしても、抗血小板薬や高脂血症治療薬は無効とされています。逆に、むしろ有害とも言われています。良心的な診療をお願いしたい。
  頚動脈エコー検査は血管内腔だけでなく、血管壁の異常も0.1mm単位で見つけることができます。しかし、動脈硬化がもっとも問題となる脳内の動脈、心臓の冠動脈、胸部大動脈などには、エコーの探触子を近くに持っていけないので検査が困難です。現在ある装置のなかで、簡便である程度の動脈硬化を評価できるのは、これしかありません。 
  患者さんには、「動脈全体の動脈硬化評価は臨床にはあまり役だたない。個別部位での動脈硬化の評価が大事である」ということも知っていて欲しいと思います。


サンデー山口2011年6月22日号

最近、高度の肥満+重症睡眠時無呼吸症候群から、大幅な減量に成功し、治療の必要性がなくなった患者さんがいました。高度肥満の方は是非減量しましょう。
また、長い間、老人性うつ病と精神科で診断を受けた患者さんが、重症の睡眠時無呼吸症候群だった例がありました。睡眠時無呼吸症候群は、注意しないと見落すことのある病気です。

サンデー山口2011年3月26日号 

金額ベースで最も使われている降圧剤はARBと呼ばれるグループの薬剤です。降圧作用は強くないのですが、製薬メーカーの宣伝のおかげで、身の丈以上に高い評価を受けています。昇圧作用が強く、また臓器や血管障害性のあるレニン−アルドステロン系の働きを阻害することにより、これらの薬剤は降圧効果を発揮します。理論的にはレニン−アルドステロン系活性が高い症例ほど効果が期待できます。逆に、レニン−アルドステロン系の活性が低い症例では、効果はあまり期待できません。しかし、このことを意識して使う医師は最近は減ってきています。実際の一般内科医では、高血圧患者の第一選択薬となっているようです。高価なARBをどんどん使ってもらうための製薬メーカーの宣伝が行き届いた結果と思います。
  基本に戻ってARBの降圧の効果をほかの降圧剤と比べてみると、どのARBもカルシウム拮抗剤や降圧利尿剤に比べて、降圧効果が弱く、見劣りします。発表された論文では、同等の降圧効果があったとされてはいるのですが、「他剤との併用も含めての総合評価であり、単独では明らかに劣ります。」
  ARBは利尿剤を使用するとレニン−アルドステロン系が活性化するので、その際にはARBの効果が強まることが期待できます。私がARBを使用するのは大部分が利尿剤との併用を前提にしています。ただし、ARBの投与を先行させたほうが、急激な血圧降下で立ちくらみを起こす例が少なくなるので、投与の順序には注意が必要です。実際に、少量の利尿剤を内服中の高血圧(180mmHg)患者に、少量のARBを追加したところ、30分後に血圧が60mmHgまで低下して、失神した高齢者がいました。関連があるかどうか不明ですが、その人は発熱時に解熱剤の坐薬でも血圧が急下降し、失神したことがあります。


サンデー山口2010年12月26日号  

心房細動は循環器専門医以外でも治療する機会が多い不整脈です。 しかし、適切に治療されているかというと疑問です。心房細動の患者さんは、不整脈以外の疾患や心不全があるかどうかも確認する必要があります。その上で、適切な心拍数に管理すること、脳塞栓リスクが高いかどうかを評価することが大切です。これらはしばしば見落とされたり、過少過大評価され、適切な治療を受けていないことがしばしばあります。
 たとえば、 1年前から脳塞栓予防のためのワルファリンの投与は行われていたが、心拍数の管理がなされておらず、頻拍による心不全となって当院を受診された患者さんがいます。また、脳塞栓予防に効果が全くなく、むしろ出血性合併症が増加するため、投与するのはよくないと2010年の日本循環器学会で報告されたたにもかかわらず、いまだにアスピリンを処方している循環器専門医がいました。 2011年にはワルファリンの代わりに使える抗凝固剤が使えるようになります。実績が少ないのですが、脳塞栓予防効果もワーファリンに劣らず、 副作用も多くないと聞いています。 製薬会社側からの情報なので、割り引いて聞く必要はあるものの、ワーファリン投与量の管理が難しい例があるので、朗報です。
追伸:2011年秋、発売から半年過ぎ後に新薬プラザキサは、腎機能障害患者に投与すると効き過ぎのために、重症出血性合併症を引き起こすことが多いとの報告がありました。循環器学会は、まず、ワルファリンを推奨するということになりました。