独り言】 
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あくまでもその時の個人的な意見です。また、後に考えが変化することもあります。
【独り言の目次】
【物理学】統一理論〔ヒモstrings理論)。2007.02.19記、2008.07.19修正
 
最近、一番感銘を受けた話題は、医学とは全く関係のない最新の理論物理学の話である。

 DVD「美しき大宇宙-統一理論への道- 」(2003年米国WGBH制作、発売元ジェネオンエンタテイメント株式会社) を見て、驚いた。私が学生の頃に難解な相対性理論や量子力学の世界の本を読んだ。現在はそれを統一する「ヒモ(strings)理論」の研究が進んでいるというのである。 ただひとつの理論で、宇宙の現象のすべてを説明する統一理論は、アインシュタインが追い求め、かなわなかった夢である。現代の理論物理学がその夢を達成するかもしれないという。宇宙の究極の法則は、ひとつのマスター方程式で表現できるという。
 力に関する知識の歴史を考えると、まず、ニュートンは重力理論で重力がいかに働くかを正確に予測する方法を発見し、天(宇宙天体の動き)と地(地上の物体の動き)を統合した。しかし、重力がなぜ作用するのか明らかにできなかった。
  アインシュタインは一般相対性理論で、重力が時空のひずみによるものであることを証明した。その後、マクスウェルは電気と磁気は同じ力であること発見し、4つの電磁気力の基礎方程式で表現できることを証明した。アインシュタインは重力理論と電磁気力理論を統合すれば、 宇宙のあらゆる現象を表現できる統一理論ができるのではないかと考えたが、できなかった。原子レベルでは重力は電磁気力に比べるとあまりにも小さすぎた。電磁気力は重力の100億倍×100億倍×100億倍×10億倍も強力であった。
  1920年代、ボーアらは、原子はさらに小さな素粒子でできていることを証明した。素粒子がどの様な動きをしているか、アインシュタイン、マクスウェルの理論では説明できなかった。重力はあまりにも弱くて問題外、電磁気力でも説明できなかった。1920年代の終わりに、量子の行動を説明できる量子力学が生まれた。量子の世界での法則は、時間と空間がねじれている。上下左右、時間の前後の概念すらはっきりしない。
「何も確実な物はなく、すべて確率で表現される(不確定性理論)」という我々の世界の常識とは全くことなる概念の世界である。アインシュタインは。「宇宙の現象は正確に予測可能だ」と考え、「神はサイコロを振らない」と言っていた。しかし、量子の世界では「すべては不確実で、決定的なことは何もない」ことがわかった。
  1930年代、量子力学は原子の世界の現象をつぎのように説明した。宇宙を支配する力は、重力、電磁気力以外に「強い力(陽子と中性子をつなぐ力であらゆる原子の原子核を造っている)」、「弱い力(中性子を陽子に変化する力)」があることを証明した。原爆はこの強い力の放出であるという。
 一般相対性理論における重力理論は、星や天体など宇宙の大きな物体の動きを正確に説明できた。他方、極めて微小な粒子の世界では、量子力学理論で種々の現象がよく説明できた。両者はそれぞれの世界で、非常に正確に現象を説明できる。しかし、一般相対性理論と量子力学理論と矛盾がおきた。シュワルツシュルトは極めて小さくて、光さえ逃がさない強大な重力がある場(ブラックホール)を理論的に予測した。後に、天体観察でこれに相当する強い重力場が確認された。ブラックホールのなかでは、大きな物体の理論と小さな物体の理論のどちらが成り立つのか 、 両者の法則は対立しているため、どうなるのかわからない。
【ヒモ理論の登場】
 ヒモ理論の以前には、
多くの物理学者は、物質は粒子の集まりと考えていた。そして、次々に多くの新しい粒子が発見され、物質の構成要素が次々と増えた。電磁気力、強い力、弱い力の3つの力を伝達する粒子も発見された。
  1968年ガブリエル・ベネチアーノは強い力を説明できる理論を捜していた。たまたま見つけた古い数学書の中にあったオイラーの関数が、強い力を表現していることを発見した。これが、ヒモ理論の始まりとなった。
  サスキンドはこの方程式が、ゴムひものような振動するヒモを表現していることに気づいた。
宇宙の万物は、ただひとつの"物"でできている。それが"ヒモ"である。物質は「粒子」ではなく、「ヒモ」であるという。極めて小さな振動するエネルギーのヒモで、すべての現象が説明できる可能性があるという。非常に大きな物にも非常に小さな物にも使える理論(統一理論)がヒモ理論で可能になるという。ヒモ理論では量子から宇宙まですべて説明できるという。
  ヒモには様々な振動パターンがあり、物質の特徴はこの振動パターンで決まるのだそうだ。つまり、ヒモの振動パターンによって、粒子の性質、質量や電荷が決まる。 しかし、そのヒモの大きさは観察するにはあまりに小さい。ヒモの質量は水素原子の100億分の1のそのまた100億分の1になるという。原子一個を太陽系の大きさにするとヒモの大きさは1本の木と同じ程度。ヒモ理論が予測する現象はあまりにも小さすぎて実験や観測ができないという問題がある。また、
ヒモ理論では宇宙は「11次元(自由度)である」、「質量ゼロの粒子が存在する」、「光よりも速いタキオンという粒子が存在する」など今までの物理学の常識を超えた理論である。
 1995年にはヒモ理論に大きな進展があった。ヒモ理論には、5つの異なる数式があるのは不自然だというヒモ理論に否定的な見解があった。ところが、ウイッテンは5つの数式は同じ物を5つの方法で見ていると発表した。以来世界中がヒモ理論に注目するようになった。ヒモ理論ではわれわれは、11次元の世界の中の、一断面であるひとつの4次元時空の世界に住んでいるという。当然、他にもたくさんの世界が、並行して存在する世界(パラレルワールド)が存在するという。いままで、読んだSF以上に奇妙な世界が現実にあるというのだ。
 
電磁気力は重力の100億倍×100億倍×100億倍×10億倍も強力である。ヒモ理論ではなぜ重力が異常に小さいのか説明できるという。本当は重力は弱くない、弱く見えるだけである。他の力と違って、重力のヒモ(グラビトン)の両端が我々の世界に固定されていないので、他の世界へ拡散するために弱くなるというのである。
 現在米国の強大な原子の超加速器のあるフェルミ研究所では、別の次元へ飛んでいく重力を司るグラビトンやヒモ理論で予測される粒子、超タイショウ粒子を証明しようとしている。また、より大きな超加速器が欧州に建設中であるという。近い将来、ヒモ理論で予測された粒子が証明される可能性があるという。
 頭が痛くなるほど奇妙な世界の話だが、また心時めく理論でもある。しかし、統一理論が証明されて、「神(宇宙、万物)の意志」が理解できても、「宇宙の寿命に比べると、極めて短時間で人類は滅びる。しかも恐らく自滅する。」、さらに「人類の将来など語るには、『今日の昼飯を何にしようか』と考える自分はあまりに小さな存在である」など、ミクロ的な思考も併存する。超現実的な途方もない宇宙、それに比べると人類の歴史、将来すら小さな歴史の一コマであり、さらに自分という存在はそれよりも遙かに小さい、、、なんだか凡庸な私の頭がこんがらがってくる。ただ、極めてちっぽけな存在である自分にはいずれも興味深い問題である。