独り言】 
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あくまでもその時の個人的な意見です。また、後に考えが変化することもあります。


【医薬品】増加するジェネリック薬(後発薬)    
 2008年7月に日本では高血圧治療薬の中で、服用する患者数が飛び抜けてに多い「アムロジピン」(先行薬の商品名「ノルバスク」、「アムロジン」)の特許が切れた。早速、多くの後発品(ジェネリック薬)がでてきた。ジェネリック薬は、製薬会社が開発した薬(先行薬、ブランド薬)の特許期間である20-25年が切れた後に発売される同じ有効成分の薬である。開発費がかからないために、ブランド薬よりも数十%値段が安い。後発薬の有効成分は先発薬と同じだが添加物などが違い、効き目が必ずしも同じではない場合もある。
  ジェネリック薬の割合(数量)は、欧米では医薬品全体の50%超だが、日本ではまだ17%と低い。 先進国も途上国も、医療費削減のために政府は安い薬を望んでいる。そのためジェネリック薬の売り上げは、今年も前年比最大15%増に達する見込みという。
 売れ筋ブランド薬の特許切れが相次ぐ一方で、有望な新薬はほとんど開発されていないため、ブランド製薬には厳しい時代になってきている。2006年に医薬品の売上高1位だった高脂血症治療薬「リビトール」も、2010年には主要な特許が切れる。
  ブランド製薬にとって、後発薬メーカーは頭の痛い競合相手である。生き残りをかけて、ブランド製薬大手はますます多角化を迫られている。2008.6月には日本の製薬第3位の第一三共が、インドの大手後発品製薬会社の株式の過半数を取得した。多角化の一環として、ブランド製薬メーカーが後発薬メーカーを取り込む動きが活発になっているのだそうだ。 
 しかし、後発薬ビジネスも競合会社が多く、儲けは少なく、楽ではない。薄利多売のビジネスモデルであるため規模を大きくする必要がある。
 
当院(院外処方)でもジェネリック医薬品を多く処方しているが、 一薬品に複数の商品名がつくので、処方箋のソフト管理が面倒になる。しかし、それ以上に患者さんの恩恵が大きいので、処方している。昨年までは、ジェネリック薬品といえば、現在はあまり使わなくなった古い薬品が多く、処方回数も金額も大きくなかった。しかし、今後は治療の主役となっている薬品(降圧剤、高脂血症治療薬)の後発品が次々と出てくる。これらは無視はできない。
 ただ、後発品が 先発品と全く同じ効果があるのかどうかは、時々疑問に思うことがある。患者さんが先発品に戻してくれということは少なくない。それでも医療費抑制の国策があり、日本でも後発品の処方数は今後もっと増えると考えられる。
 
参考 NEWSWEEK 2008.7.16  
2008.7.16記 2008.9.12修正

【医薬品】2008年前期のジェネリック薬(後発薬)の使用状況  
 後発薬品は先発薬品よりも価格が安く理論上の効果は、同等程度になる。厚生労働省は薬剤費の圧縮の理由から、さらなる後発薬品の普及を目指している。海外での後発品の処方割合は約50%で、日本は約17%。政府はこれを30%にまで高めることを目標としている。
  2006年4月に、後発品の処方が増えるように、処方箋の形式が変更された。しかし、効果が上がらず、2008年4月には処方箋の形式が再変更された。「後発品への変更可」にチェックと署名をしていたのが、「後発品への変更不可」にチェックと署名をするようになった。つまり、変更可能が基本となり、変更不可がオプションとなり、変更不可を出しにくくした。実際、事務的にも「全部変更可能」のほうが手間が少ない。
 日経メディカル9月号に後発品の使用状況に関するアンケート調査の報告があったので紹介する。厚生労働省の後発品促進策に合わせて、先発品メーカーの後発品市場への参入が増えているという。通常はかかった費用によって、病院の保険報酬が決まるが、一部の病院では、診断名によって診療報酬が決まるDPC方式に数年前からなっている。このDPC方式の病院では同じ病気でもかかる経費が多いほど、収益が減るので、安い薬の採用が多くなる。
 しかし、医師の方からみると後発薬品を先発薬品と同じように信頼できないとする医師は多い。後発品への変更が不可とする一番の理由が品質に対する不安となっている。なお、先発品のほうが差益が大きいので後発品を扱わない一部の医療機関もある。
  注目すべきは、後発品をすべて認容する処方箋(31%)とすべて拒否する処方箋(42%)が同じくらい多数あり、2極化しているということ。また、後発品への変更不可とする処方の内容、つまり処方薬の種類には傾向がある。危険性や重要度の高い薬剤、抗癌剤、降圧剤、心臓病治療薬、免疫抑制剤、抗菌剤は後発品変更不可が多い。一方、鎮痛剤、ビタミン剤、去痰剤、抗アレルギー剤、睡眠薬、胃薬などは後発品への変更可が多い。
 個人的には、後発薬品を信頼性に多少の懸念はあるが、医療経済学的な見地から、ある程度の後発薬品の普及は「あるべき姿」と考えている。いろいろ試しながら、後発品の採用をある程度勧めていきたい。

 
参考 日経メディカル2008年9月号

 2008.9.10記 2008.9.12修正