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あくまでもその時の個人的な意見です。また、後に考えが変化することもあります。


【医療】「現在の医療を続けるには、今よりお金がかかる」。 2007.10.24記 2007.10.24修正
 「医療崩壊」が進んでいる。産科、小児科の診療閉鎖が痴呆の基幹病院でも日常的に起こっている。私も10年前は勤務医であったので、現在の状況がなぜ起こったかは理解できる。医師としての責任感から、何とか頑張ってきたが、当時でも勤務医の就業環境は劣悪であった。医師のほとんどは、名目だけの『勤務医は管理者』、実態とかけ離れた『形式的な労働時間』のために、労働基準法の適応外である。徹夜の勤務の翌日に、ミスを許されない緊張した診療が続く日が日常的にある。代休はほとんどない。いつか「医療ミスを起こす」、「医療訴訟に巻き込まれるのは確実である」といった懸念の中で働いていた。
 こういった状況は、安い医療費と密接に関係している。厚生労働省は、医療費削減のために医師数を意図的に少なくした。一方、この20年間で女性医師の割合が約20%から約40%くらいにまで上昇した。女性医師は体力的にまた家族の生活を優先するために、過酷な医療現場を回避する傾向が男性よりも強い。その結果、実質的な医師数は減少し、男性医師への過重労働の割合が増した。女性医師が悪いと言うのではない。もともと無理な構造が崩れただけである。
 現在の医療崩壊が、「現在の医療費は高い」、「ITなどの利用で医療は効率化できる」、「医師は傲慢だ」という社会の認識の間違いの是正する発端になればよいと考える医師は少なくない。
  誤解のないように一言加えておくが、「医師は手抜き診療だ」、「もっと時間をかけるべきだ」という見解は、現在の医療体制では多くは無理な要求ということを知ってほしい。医師からすると、現在勤務医は献身的に過重労働を受け入れている。「自分には最高の医療と手間暇をかけてくれ」と要求する患者さんや家族の気持ちはわかるが、勤務医は限界に達している。
  患者さんが要求するレベルを達成するには、医療費の増額が不可欠である。現在の医療費で高いサービスを要求するのは、100万円のエコノミーカーに400万円の高級車なみの安全性、快適性を要求しているようなものである。仮に2倍の医療報酬が必要とし、この増額分を全部患者さんの負担にすると、3割負担の場合には負担の金額は現行の医療総額×0.3から、現行の医療総額×0.3+現行の医療総額×1.0倍で1.3倍となり、自己負担が約4倍となる。1割負担の場合は11倍になる。1.5倍の医療報酬が必要として、これを全部患者さんの負担にすると、3割負担の場合の自己負担は2.7倍、1割負担の場合は7倍になる。医療費の自己負担は2倍どころではすまない。逆に言えば、医療費の国庫負担を少なくするために、医療費はかなり安く抑制されていると言えるでしょう。
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