【リウマチ熱の簡単な解説】
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公開日2003.11.04 更新日2004.08.30 TOPへ
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参考書
●心臓弁膜症 村松 準(北里大学助教授)、柏崎禎夫(北里大学助教授)、富永誠一(北里大学教授)編著 新興医学出版社 第一版発行昭和54年11月5日
●今日の診療Vol.13 CD-ROM (C)2003 IGAKU-SHOIN Tokyo
【リウマチ熱とは?】 |
よく言う「リウマチ」は「慢性関節リウマチ」のことで、「リウマチ熱」は別の病気である。発症初期の症状はともに関節炎がおこり、両者の鑑別が困難なこともあるが、その後の経過・治療方法は全く異なります。リウマチ熱では、心臓弁膜の障害や他の心臓病が発生し、長い年数をかけて、心臓弁膜症を進行させてゆく。
リウマチ熱は、喉の炎症(咽頭炎や扁桃腺炎などの感冒様症状)や猩紅熱など連鎖球菌による感染(通常、1〜5週間以内の感染)が原因で発生する。しかし、連鎖球菌感染後にリウマチ熱になるのはほんのわずかである。
初発年齢は8〜12歳が全体の約2/3を占める。3歳以下では連鎖球菌の感染があってもリウマチ熱になることは少なく、また成人の初発例も非常に少ない。 発症好発時期は連鎖球菌感染が多い晩秋から早春。
○臨床症状・所見
リウマチ熱発症の約1〜4週間ぐらい前に、連鎖球菌感染症(感冒様症状33%、扁桃腺炎16%など)がある。しかし、リウマチ熱の45%はこのような連鎖球菌感染の症状が不明である。典型的なリウマチ熱では突発的な発熱と関節痛で始まる。 小児では腹痛で始まることがある。連鎖球菌感染からリウマチ熱が発症するまで約2週間の無症状期がある。特徴的な臨床症状は以下のとおりである。
●1)多発性、移動性関節炎
疼痛を伴うが、無治療でも3週間以内でほとんど治り、あとに障害を残さない。治療を行えば約1週間で関節炎は治る。発熱を伴って急性に発症した慢性関節リウマチは、初期1〜2週間は全く鑑別不能なことがある。しかし、リウマチ熱では2週間過ぎれば、一般に軽快するが、慢性関節リウマチでは関節炎が持続する。手指などの小さい関節が障害されている場合は、まず慢性関節リウマチと考えてよいようである。
●2)心炎:心内膜炎、心筋炎、心膜炎
動悸・呼吸困難・易疲労性などの症状を示すことがある。心筋炎を起こすとより強い心不全症状を呈することがある。 器質的な心雑音、心膜摩擦音、心嚢液貯留を認めることがある。
※リウマチ熱による病変について リウマチ熱による心病変は、心内膜、心筋、心外膜に見られます。心内膜で最も侵されやすいのは弁膜である。 |
●3)舞踏病(ぶとうびょう)
リウマチ熱の中枢神経病変によるもので突然おこる無目的な不随運動(動かそうと意図しないのに勝手に動く運動)である。睡眠中は消失する。不随運動は手と顔で観察されることが多い。具体的には、顔を無意味にゆがめ、口を曲げたり、下を突き出したりする。また、手を握ったり、開いたり、腕を振り上げたり、下肢を回したりと手足の無意味な運動を耐えず繰り返す。書字拙劣、発語および構語障害や歩行障害などで気づくこともある。知覚障害や錐体外路症状(パーキンソン症状=手足の筋肉が緊張する、動作が鈍くなる、手が震える、ジスキネジア=口周辺や舌の異常な運動、舌のもつれ、手足が勝手に動く、アカシジア=じっとできない、体が勝手に動く、落ちつかない)は伴わない。
●4)皮下結節(ひかけっせつ)
エンドウ豆大の硬い無痛性の小結節で、皮膚とは癒着せず、結節状の皮膚には炎症所見はありません。肘、手、足などの四肢伸側の骨隆起部によくできる。数は平均3〜4個(1〜30個)で、1ヶ月以内に消失する。皮下結節はリウマチ熱の約5%に見られ、重症心炎に合併しやすいと言われています。
●5)輪状紅斑(りんじょうこうはん)
胴体や四肢の屈側に出現する一過性かつ移動性のピンク色の紅斑。輪状ないし花弁様、中心部は健常皮膚で、遠心性に拡大する。大きさはまちまちで、押さえると白くなります」。痛みや痒みはなく、硬結や隆起もありません。発熱時や湯上がりによく観察されます。その出現は必ずしもリウマチ熱の活動性とは平行しません。他の疾患ではほとんど見られず、診断的に価値の高い所見である。
○検査
リウマチ熱の原因である連鎖球菌に感染している患者血清中では、連鎖球菌の菌体外毒素に対する抗体(抗ストレプトリジンO抗体(ASO)、抗ストレプトキナーゼ、抗ヒアルロニダーゼ抗体など)の値が高くなります。ASO抗体連鎖球菌感染後1週間で血中に出現し、3〜5週間で最高値に達し、2〜3ヶ月で正常値に復することが多い。1回の判定では少なくとも成人では250Todd単位、5歳以上の小児では366Todd単位以上の時にASO値上昇と判定する。
○予防
連鎖球菌の感染後すぐに抗生剤を投与すれば、リウマチ熱の発生する危険を減らすことできる。 連鎖球菌感染後5日以内に抗生剤(ペニシリンなど)を投与するとリウマチ熱は発症しないので、現在では連鎖球菌感染を治療しないでおいた場合以外にリウマチ熱を発症することはまれである。
○治療
治療の目標は感染を治療し、それによって合併症の発生を防ぐことである。
抗生物質類を感染に対して投与する。慢性または治りにくい場合には、長期間にわたって抗生物質を投与することがある。痛みおよび腫脹を抑えるための鎮痛解熱剤などの薬物を用う。ただし、鎮痛解熱剤を子供に投与する場合は、副作用が生じることがあるので、かならず医師に指示を受けて下さい。一般療法としては、身体活動を控えます。治癒するまでは、無理せず療養することを勧めています。
○予後と転帰
リウマチ熱は再発することが少なくない。関節と心臓の合併症は長期に及び、重い症状も伴う。 リウマチ熱で一番問題になるのは心臓弁膜症の合併が多いことである。