■■ 実際に使われる冠動脈の部位の名称 ■■
公開 2004.03.16 更新 2004.03.16  左メニューを隠す   HOMEへ

 冠動脈は終末動脈(end artery)といって、通常、吻合(ふんごう)がないために閉塞すれば、その部分よりも末梢に血液の強い供給不足(心筋虚血)が生じます。そのため、冠動脈の走行と支配領域(血液還流の範囲)を理解することは、虚血性心疾患の理解や治療にとても大切な知識です。ここでは、実際の臨床の場で使われている冠動脈の部位を示す呼称として、冠動脈のAHA分類(米国心臓協会:American Heart Association)を紹介します。「左冠動脈前下行枝の中央部」などを言うよりも「冠動脈の何番」という言い方が、手短でわかりやすいために、よく使われています。
【冠動脈の走行】
●右冠動脈(RCA)は心房と右室の境界にある房室間溝の前方に沿って心臓の表面を走行、右室枝(V)や鋭角枝(AM)を分岐しながら、心臓の後ろ側に回って、心尖部方向に4PLや4PD(右室と左室の心臓前面の境界である後室間溝に沿う)の枝となって心尖部に進みます。
●左前下行枝(LAD)は前室間溝(右室と左室の心臓前面の境界にある溝)に沿って心尖部に進みます。中隔穿孔枝は心臓の筋肉の中(心室中隔)へ血管が入り込んでいます。その他の太い枝はほとんど左室の表面を走行しています。
●左回旋枝(LCx)は左房と左室の境界にある房室間溝に沿って心臓の表面を後ろに回り、途中で心尖部方向に12番のOM(obtuse marginal branch:鈍角辺縁枝)や14番PL(postero lateral branch)を分枝します。
  なお、左室の背面側は、右冠動脈と左回旋枝の両方から血液の供給を受けています。どちらの血液供給量が大きいかは個人個人で異なりますが、多くは右冠動脈の支配領域が大きいか、または両方が同じ程度のことが多い。左室の背面側の血液供給は、左回旋枝が主体となることはまれです。