人工心臓弁には、生体弁と機械弁があります。
生体弁は、ブタの弁やウシの心膜から作った弁などを拒絶反応など起こしにくいように処理した物です。生体弁は手術後に血液が弁にこびりつかないようにするための抗凝固療法(ワーファリン)を行わずに済むという長所があります。逆に、約10〜20年くらいで弁が痛んで、再び弁置換手術を行わなければならないという大きな欠点があります。生体弁は
若年者では早く劣化します。
将来出産を希望する女性では、妊娠早期に催奇形性のあるワーファリンを内服しなくてもよいので生体弁を選択することが多い。また、高齢者(70歳以上)では生体弁劣化が遅いため生体弁を選択することができます。弁劣化が早くなる腎不全などの病気のない高齢者では、最低10年以上の長期間使用可能です。
一方、機械弁は炭素線維やステンレスからできています。現在は、蝶番(ちょうつがい)に耐久性のある素材を使った傾斜型二葉弁がよく使われています。弁が閉じるときに、聴診器なしで音が聞こえます。生体弁より遙かに耐久性が高いことが特徴ですが、手術後に抗凝固療法を一生続ける必要があります。
血栓や細菌感染がなければ、最新の機械弁の耐久年数は30年以上(理論上は千年とも )と言われています。そのため40歳以下、再手術になりやすい人やもともと抗凝固療法を行う必要のある慢性の心房細動患者では機械弁が第一選択です。
ある施設における生体弁と機械弁の使用比率は3:7くらいです。耐久性の問題から、一般的に生体弁よりも機械弁のほうが多用されています。
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